開院いたしました – しんたに内科消化器内科

検査の対象となる臓器・疾患

咽頭・喉頭
鼻から入れた胃カメラが最初に突き当たる部位が、上咽頭と呼ばれる部位です。ここから口の中に入っていき中咽頭、下咽頭、そして喉頭（声帯がある部位、喉仏、です）を観察します。
これらの部位にも癌が出来ます。あつかう科としては耳鼻科の専門領域になりますが、胃カメラでBLIというフィルターを通して観察すると、わずか1-2mmの小さな早期癌や前癌病変が、黒い点の集合として、浮き上がって見えてきます。
この他これらの部位が炎症でただれている様子、良性のポリープ、舌の癌、などが観察されることもあります。
食道
食道癌、逆流性食道炎、好酸球性食道炎、食道ポリープ、食道カンジダ症、魚の骨などの異物、食道憩室などをチェックします。フィルターを通して観察すると、早期癌の検出率が上がります。
逆流性食道炎の影響で、食道本来の扁平上皮が円柱上皮に置き換わってしまう「バレット食道」と呼ばれる状態が、胃カメラで観察されることがあります。バレット食道が拡大すると食道腺癌のリスクが高くなります。欧米人の食道癌は多くが腺癌で、日本人の食道癌はほとんど扁平上皮癌でしたが、近年日本でも食道腺癌が増えて来ていることが報告されています。バレット食道がある場合には、胃カメラで注意深く経過をみる必要があります。
胃
胃癌、胃腺腫、胃潰瘍、胃粘膜下腫瘍腫瘍（GISTなど）、胃ポリープ、委縮性胃炎、タコイボ胃炎などをチェックします。フィルターを通して観察すると、早期癌の検出率が上がります。
ピロリ菌という細菌が胃に住み着いていることがあり、この場合これを放置しておくと胃炎が進行し、やがて胃潰瘍や、更には胃癌の原因になってしまいます。ピロリ菌はほとんどが５才までの幼少期に、家庭内で経口的に感染すると言われています。成人になってから感染しても、一時的な急性胃炎を起こす程度で、定着することはありません。しかし胃酸の分泌が完成していない、免疫機構も未熟である幼少期に感染すると、定着してしまいます。ピロリ菌の検査の方法は尿、血液で抗体を調べる方法、胃カメラ時に胃粘膜を3か所ほど採取してピロリ菌の反応を調べる方法などいくつもありますが、いずれも５％程度エラーが出る場合があり、複数の方法で検査した方が良いとされています。
胃カメラの時にはピロリ菌の有無も同時に検査します。もし陽性であれば、原則的にはこれを退治する治療を行います（除菌、といって2種類の抗生剤と制酸剤を、1週間飲みます）。しかしご高齢である場合には、かえってデメリットが大きくなる場合もあり（誤嚥性肺炎のリスクが大きくなる可能性、逆流性食道炎が悪くなる場合、など）、除菌治療につき、良く検討する必要があります。
十二指腸
球部（胃を出てすぐの部位）と、その奥の下降脚を観察します。下降脚には胆汁と膵液の出口である主乳頭があり、この部位に腫瘍が出来ることもありますので、ここも観察します。十二指腸潰瘍、十二指腸ポリープ、十二指腸粘膜下腫瘍、十二指腸癌、などをチェックします。

検査の対症となる主な疾患

大腸癌
進行した大腸癌が見つかれば、癌の一部を生検（癌組織の一部を鉗子でつまんで採取します）し、病理検査に提出します。結果は1週間ほどで出ます。この場合、治療は原則として外科的な手術になりますが、他の臓器やリンパ節に転移がある場合は、抗癌剤治療を組み合わせることになります。
大腸ポリープ
大腸ポリープには大きく2種類あって、癌になるタイプである腺腫と、基本的に癌にはならない過形成性ポリープと呼ばれるタイプ、に分けられます。
先ほども述べましたが、大腸癌は基本的に腺腫と呼ばれる小さなポリープから発生しますので、腺腫を見つけて、これを切除してしまえば、大腸癌を防げるわけです。
大腸ポリープを切除する方法は従来、金属性の投げ縄の様な構造を持つ電気メス（スネアといいます）でポリープの首を絞め、これに高周波を通電することで熱で「焼いて」切除する方法しかありませんでした。この方法には、焼くことで腸に穴があいてしまったり、血管が損傷されて切除後しばらくしてから出血したり、といった偶発症の危険性がありました。近年、通電を用いないで切除する、コールドポリペクトミーという方法が開発されました。当院でも用いている方法ですが、熱をかけずに切除しますので、先ほどのような偶発症のリスクを避けられます。切除したポリープは回収して、病理検査に提出します。病理結果で、ポリープの頭の部分に早期癌が見つかるケースもあります。このような場合、ポリープの根元の方が腺腫であれば、癌については「取りきれた」ことになり、追加の治療は必要ありません。一方癌細胞が血管やリンパに入っていることが観察された場合には、追加の治療が必要になる場合があります。
この他GIST、平滑筋腫、脂肪腫、嚢胞、などは粘膜下腫瘍として観察されます。脂肪腫、嚢胞などは柔らかいので、鉗子で表面を押すとへこんで形が変わります。一方GISTなど固形で硬いものは形が変わらないので、診断の一助となります（クッション・サインと呼ばれる方法です）。
またリンパ腫、炎症性の疾患である潰瘍性大腸炎、クローン病、また大腸憩室などが診断される事もあります。肛門も観察しますので、痔などの状態もわかります。

より苦痛の少ない検査を目指して

大腸カメラはつらい、痛い、というイメージをお持ちの方もあると思います。検査時の苦痛は腸の壁が過度に伸ばされることで発生します。最新の大腸カメラは以前より細くしなやかになり、またカーブトラッキングといって、カメラが大腸の曲がり角に当たると自動的に柔らかく曲がることで腸を伸ばさない構造に進化しており、苦痛はかなり軽減されました。
腸がしぼんだ状態では小さな病変は見えないため、膨らませる必要があります。従来は空気を入れて腸を膨らませて観察しましたが、検査中あるいは検査後お腹の張りがなかなか取れず、患者さんによっては腹痛や嘔気が出る原因になっていました。当院では炭酸ガス送気機器を導入しており、空気のかわりに二酸化炭素（空気に比べて100倍ほど早く吸収されます）を使うことで、これらの苦痛を軽減しています。
胃カメラと同じく点滴で鎮静剤を使う、などの工夫を組み合わせると苦痛は更に少なく検査出来ます。コロナ感染対策も、胃カメラ同様に行った上で検査します。
一方、お腹の手術を受けられている方、子宮内膜症などでお腹の中に炎症がある方、大腸憩室の炎症を繰り返してきた方、などではお腹の中で腸の外側と腹壁がくっついたり、腸同士が外側でくっつく「癒着」が起こっている場合があります。癒着が強い場合は、大腸カメラが通る時に、どうしても腸が引っ張られた状態になり、痛みが出たり、あるいは曲がり方が急角度になってしまいカメラ自体が通過出来ないケースもあります。そういうケースでは大腸カメラを、途中で終えざるを得ないこともあります。

より苦痛の少ない検査を目指して

従来の胃カメラは直径11mm程度の、太いカメラを口から入れて行くものでした。その後より苦痛の少ない検査を目指して、直径5mm強の細い胃カメラが開発され、鼻から入れるという方法が登場しました。細くなったのと、挿入時に舌根が下がる動きが少なくなり「オエッ」となる苦痛が軽減されました。検査中患者さんと医師が会話できるなど、かなり楽に検査を受けられるようになりましたが、残念ながらカメラが細い分まだ性能が悪く、太いカメラに比べると画像は暗く、画質もいま一つ不鮮明なのが難点でした。また先端の曲がる角度も小さく、操作性もあまり良くありませんでした。
ところが2016.11月に新しいモデルが登場し、状況は大きく変わりました。光源にレーザー光を採用したことで画像が格段に明るく、解像度も高く画質も鮮明になりました。視野も広がり、性能は太い胃カメラとほぼ同レベルになりました。また胃カメラの外側を覆う素材も柔らかいものになり、挿入時の鼻の痛みも軽減され、操作性も大きく改善されました。
口から太い胃カメラを入れる場合に比べ患者さんが苦しくないので、医師も「微妙な」病変があっても、ゆっくり時間をかけて観察できるのも、大きなメリットです。医師も人間ですから、検査中患者さんが苦しがっていると、時間をかけた観察はしにくいものです。
患者さんの中には鼻の通り道が狭かったり、鼻の痛みに敏感な方もいます。その場合は細いカメラを口から入れて検査することになりますが、その場合でも太いカメラに比べると、やはり苦痛の少ない胃カメラ検査が出来ます。また、本当の意味での麻酔ではありませんが、点滴で鎮静剤を注射してから胃カメラを行うと、より苦痛が軽減されます。患者さんによっては眠っている間に胃カメラを受けられる方もおられます。
当院では注射をせず、メントール製剤を胃の中に散布する方法をとっていますので、注射の痛みはありません。

大腸がんの早期発見と防止

大腸がんの早期発見
大腸癌は5大癌の一つで、男女共に3番目に多い癌です。また女性の癌、と言えば乳癌や子宮癌を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は女性の癌の死亡数で一番多いのは、大腸癌です。
大腸癌は年々増えており、年間約2万3千人の女性が大腸癌で命を奪われています。これは乳癌の約1.7倍、子宮癌の約6倍です。大腸癌は他の癌に比べ生存率が高く、「治せる癌」の代表です。にも関わらず死亡数が一番多いのは、かなり進行してしまった状態で発見されている女性が多い、という事実を示します。早期の大腸癌では血便や腹痛などの症状はほとんど出ません。検診を受けて便潜血反応を見ることも大事ですが、この検診の受診率も北海道は非常に低いのが現状です。
女性の大腸癌は40歳を境に増えますので、大腸癌検診も積極的に受けるようにしましょう。

大腸がんを未然に防ぐ
若くても安心できない場合もあります。20代の女性が「血便が出た」と当院を受診され、大腸カメラを行ってみると1Cmを越える大きなポリープがみつかり、内視鏡で切除してみると「高度異型」といって、発癌寸前であった例も実際に経験しました。発癌する前のポリープ（「腺腫」という、まだ良性の段階）のうちに切除してしまえば、大腸癌を未然に防げます。

検査の対症となる臓器・疾患

肝臓
C型肝炎、B型肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎（:NASH）などの慢性肝炎、肝硬変では肝細胞癌の発生に気をつけなくてはいけません。エコーでは肝臓に癌がないか、肝臓が腫れていないか、脂肪肝がないか、などを見ます。また肝硬変では肝臓が腫れたり内部が荒れて見えたり（粗造、と言います）、辺縁がでこぼこになっていたり、腹水が出てきたりしますので、これらの点もチェックします。この他肝血管腫、転移性肝癌などの肝腫瘤や、閉塞性黄疸（胆石や胆管結石、胆管癌、膵頭部癌などによって、胆汁の流れがせき止められてしまい、肝臓の中の胆管が腫れてくる状態）も対象になります。
胆嚢
胆石、急性胆嚢炎、胆嚢癌、胆嚢ポリープ、胆嚢腺筋種症、といった病気が対象になります。胆嚢炎では胆嚢が腫れて大きくなり、壁も厚くなります。胆嚢癌は胆嚢の壁の内側に出来ますが、エコーでは癌が壁の外側にまで広がってしまっていないか（浸潤、といいます）、がポイントになります。
腎臓
腎臓は左右に1個ずつ、2個あります。腎結石、腎癌、腎血管筋脂肪腫などの良性腫瘍などが対象になります。また腎結石が尿管に流れ出てしまうと尿管結石となり、背中の痛みや血尿を伴いますが、この時エコーでは水腎症（尿管が石でせき止められ、腎臓の中心である腎盂に尿が溜まって、腎臓が腫れる状態）が見られます。
また副腎は腎臓の頭側に位置する、いろいろなホルモンを作る小さな臓器ですが、副腎の腫瘍が観察される事もあります。
脾臓
脾臓にも腫瘍が出来ることがあります。肝硬変や、ある種の血液の病気では脾臓が腫れます（脾腫と言います）。また膵臓は最後脾臓に付いて終わりますので（膵尾部、と言います）、脾臓を通して膵尾部の異変が観察されることもあります。
膵臓
膵臓は胃の裏側、背中側、背骨の前側に位置する、オタマジャクシの様な形をした臓器です。オタマジャクシの頭に相当する膵頭部は、膵癌が一番多く発生する部位で、腸から肝臓に向けて流れ込む門脈と、胆汁を十二指腸に流す総胆管が貫通します。膵臓の中心には膵液を集めて十二指腸に流す膵管が走っており、膵癌はこの膵管から発生します。エコーでは膵癌がないか、膵管が腫れていないか、内部に膵結石がないか、などを見ます。また急性膵炎では膵臓が腫れて、周囲に水が染み出す所見が見られます。慢性膵炎では膵臓が萎縮したり、線維化している様子が見られます。膵頭部を貫通する総胆管にも石や腫瘍が出来ることがあり、これもチェックします。
腹部大動脈と総腸骨動脈
高脂血症や高血圧で動脈硬化を合併すると、エコーで動脈の壁が石灰化ででこぼこになっている様子が見られます。また腹部大動脈や総腸骨動脈に、動脈瘤が発見されることもあります。
このほか肝臓・腎臓・膵臓などの嚢胞（水が溜まった袋、です）、癌性腹膜炎などに合併する腹水、腹部のリンパ節が腫れていないか、などもチェックします。